【製薬業界】ここが変だよMR③ 製薬会社の不思議な慣習

こんにちは、 ちあき です。

年末が近づいてきました。

この頃になると、ついこの間までは、12月決算の外資系製薬メーカーが薬局に「買ってください」とお願いにいく風景が日常的でした。

6ヶ月ごとの決算で株主によい報告をするために、売れていないMRは薬局に頭を下げて1か月分~6ヶ月分、前倒しで購入していただいたりするのです。

ぶっちゃけ粉飾決算ですよね。

私たちのような内資系企業は、だいたい、4-9月・10-3月でそれぞれ1サイクルなので、9月と3月が計画達成が難しいMRにとっては、無理なお願いをするのに追われる地獄のような月でした。

今ではそんな「詰め」と言われる作業は時代遅れになりつつありますが、勤務地が田舎だったり、旧態依然とした会社では、まだ残存しています。

早くなくなればいいのに、こんな慣習、と思います。

今回は、業界では一般的ですが異業種からみて「なんで?」と思うような慣習についてまとめてみます。

①スーツなのに名札を付けている

最初、「小学校かよ」と思いました。(笑)

みんなスーツを着ていると名前を覚えてもらえないのか、各メーカーは会社の名前と自分の名前が入った名札を胸ポケットに入れていて、

なぜか、名札を付けるのが当然のごとく振舞っています。

正直、めっちゃはずかしいです。

3ピースで青のストライプのスーツとか着てるのに、胸には名札付けてるんですよ?(笑)

通常は社員証を首から下げているくらいで、アポイントメントで取引先を訪問する場合に名札を付けたりしませんし、名刺を交換して面会予約をしている時点で「だれが何の用件で来るのか」を認識しているものです。

しかし、MRは名札をつけなくては、病院に行っても認識してもらえません。

この慣習は、「いかにMRが医療機関にとってどうでもいい存在と思われているか」が表れています。

②月に1回は、1日中缶詰めの「お勉強の日」がある

1日中会議なんて、非効率的すぎることこの上ないのですが、これは義務になっています。

なぜか?

公益財団法人MR認定センター というところが発行している民間資格の「MR認定」を更新するためには、「継続教育」が必要だからです。

MR認定証の有効期限は5年間です。
更新するためには、MR認定証の有効期限の前年3月31日までの5年間に教育研修を受講し、修了認定を受けていることが条件です。

継続教育は生涯教育の一環をなすものと位置づけられ、日進月歩する医療業界の中で、新しい情報、知識を修得するために製薬企業またはCSOで継続的に行われているものです。

継続教育を所定の5年間受講し、常に新しい情報や正確な知識の修得を行っていることが、MR認定証の更新条件となります。

この認定がなくては入れない施設もありますが、MRをするうえで必須か?といえば、必ずしもそうではありません。

しかし、MRとして転職する場合には必ず必要になりますし、異業種から転職して導入教育(社内研修)を受けた後、このMR認定試験を受けることになり、合格しないと恥ずかしいことになります。

そして、晴れて合格した社員は一定の継続教育を社内で受けなくてはならないので、1日みんなで集まって勉強会をするのです。

しかし、その内容は最新の文献を紐解いたり、ご専門の先生のご講演を拝聴するような内容ではなく、会社の教育部門が作ったテキストを読んで「売るための話し方」や「都合のいいデータの解釈」などを社員に刷り込むための時間になってしまっています。

これでは、素直な社員ほど、会社の考えに洗脳されてしまいます。

1日勉強会をするのは百歩譲って構わないのですが、会社の都合に合わせたデータの勉強ではなく、疾患や治療について偏りなく先生とディスカッションできるようになるために時間を資するべきなのではないかな?と思います。

しかも、営業先でのトークの練習をするのですが、このトークがいちいち理詰めで相手をやり込めようとするロジカルシンキングとトーキングの練習ばかりです。

正直全く役に立ちません。

相手のニーズを聞き、相手に合う提案をするのが営業の本質であるのは皆さんもご存知のことと思いますが、無理にでもできるだけ多くの人に処方してもらうことを会社の本部が未だに重視してしまい、その考えでマーケティング戦略を考案するので、本社方針自体が患者さん本位の提案ではないことがあります。

できるだけ大人数の患者さんを投与対象にあてはめたいがために、誘導尋問するようなトーク方法を社員に学ばせていますが、賢い先生方に通用するはずがありません。

「ああ、こいつは患者のことを考えていないな」と呆れられて終わりです。

すでに現場ではそういうケースが散見されていて、先生方の中には「MRの言うことなど信じない」と思うひとすら生まれてしまっているのに、現実に気づけない製薬会社はまだあります。

そういう会社やMRから終わっていくのだろうな、と思います…。

愚痴っぽくなってしまいましたが、民間資格の更新と社内の洗脳のための無意味な会議で貴重な平日を丸1日つぶすこの文化は、一般的には非常に珍しい文化だといえます。

③競合他社の製品と差別化を図ってはいけない

通常、営業といえば、Aの製品を売るために、競合他社のBの製品と比較したメリット・デメリットを一覧にして比較し、ある企画のコンペでプレゼンし、契約を勝ち取るイメージです。

しかし、医薬品においては、他社の製品の良いところも悪いところも話してはいけません。

なぜか?

厚生労働省から発刊されている「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」において、「不適正使用又は誤使用を誘発しないよう、販売情報提供活動において次に掲げる行為をしないこと。」として、小項目に以下のことが禁止行為として記されているからです。

1 虚偽若しくは誇大な表現又は誤認を誘発させるような表現の使用その他広告規制において禁じられている行為をすること。

2 承認された効能・効果、用法・用量等以外の使用方法を推奨すること。
なお、外国において承認等を得ている場合であっても同様であること。

3 科学的又は客観的な根拠なく恣意的に、特定の医療用医薬品の処方、使用等に誘引すること。

4 他社製品を誹謗、中傷すること等により、自社製品を優れたものと訴えること。

5 疾患の罹患や疾病の症状を過度に強調し、不安を煽ること。

6 一般人向けの疾患啓発において、医療用医薬品による治療(診断及び予防を含む。以下同じ。)のみを推奨するなど、医療用医薬品による治療以外に治療の手段がないかのように誤認させること。

7 その他医療用医薬品の不適正使用又は誤使用を誘発させるおそれのある表現を行うこと。

つまり、自分の会社の薬のことだけしか話すことができません。

「B社のあの薬と比べてどうなの?」と聞かれたら、

「それは私からは話せません、B社に聞いてください」と答えることしかできません。

「こういう使い方はできるの?」と聞かれたら、

「添付文書に記載のない使い方はできません」と答えることしかできません。

「○○大学の○○先生はどう使ってるの?」と聞かれたら、

「そういった他の先生の処方に関する情報は誇大広告にあたるので話せません」と答えることしかできません。

「そんなん読めばわかるわ!読んでわからないことか読むのが手間だから聞いてんだよ!そんなことも答えられないの??」

ってなりますよね?

でも、そういう決まりなので、そうとしか受け答えできません。

しかも、今は「医療用医薬品の広告活動監視モニター事業」というのがあり、「ルール違反をしている会社はいないか?」と覆面調査がされています。さらに予算を増やして行われることが決まっており、自分が担当している病院でうっかり先生方の期待に応えようと他社の製品の話に触れたりしてしまったら、先生に当局に通報されてしまいます。

だから、訪問時の製品説明には細心の注意を払います。

もし摘発されてしまったら、「コンプライアンス違反」になります。

重大な違反を犯した社員ということで、一発アウト。クビです。

MRの仕事は、一昔前の認識のような「営業」ではなく、せいぜい自社の製品を安全に使用してもらうために「最新の副作用情報」と「会社の審査を通過するまでに時間が経過してHOTではなくなってしまった論文情報の一部」を提供するくらいのことが、限られたできる事になっています。

副作用情報の収集という仕事も「PMSモニタリング」という別の職種に移行する可能性が高く、営業職としてバリバリ働こうと思って今からMRに転職してしまうと、今までのノウハウが生かせなくて、「こんなはずではなかった」と思う日が来ると思いますので、注意が必要です。

では、我々MRは何をするべきなのか?

一般企業で働くみなさんや世間で認識されていたのは、「白い巨塔」や「ジェネラルルージュの凱旋」などの医療サスペンスドラマ・映画に描かれるような、先生の奴隷のように機嫌取りに日参し、いつ何時でも接待に付き合う、いわゆる「プロパー」の姿かと思います。

しかし、それはかなり昔の話で、今はもう役割が異なっています。

製薬会社は株式会社である以上、株主がいるので、売上と純利益の最大化を追求されることは避けては通れないでしょう。

しかし、生命関連産業の一翼を担う存在として、在り方を改める時代になったのだと思います。

「売上を上げてこい」という会社の圧力に屈することなく、

以下の2点にのみ忠実に誠実に貫くことが、これから生き残ることができるMRではないかと、私は思っています。

・自社の製品を適切に使っていただくために必要な安全性に関する情報を持ち、患者さんのご様子を常に気にかけて副作用情報をヒアリングし、副作用発生時の適切な対処が説明できること

・Drが専門外の疾患や薬物治療について知りたいとき、最新のガイドラインとエビデンスに沿って先生の質問に的確かつ簡潔に回答ができること

人間的な魅力で近づいて温情で処方してもらおうとしたり、専門外の疾患で偏った情報を与えて口の巧さで説き伏せてだまそうとしたり、今まで大きな顔をしていたそういう人間を私たちが信用できないように、先生方も信用しないのだということに、早く気づいてほしいものです。

そういうことに、もう辟易としていて、私自身新しいスタイルを模索中です。

「あなたがいてくれてよかった」。そういわれる存在でありたいものです。

では、また。

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